小沼ようすけさんのひとことが私のギター人生を変えた🎸〜後編〜

ものすごくレイドバックしたグルーヴだ

一瞬、自分がどこに居るかが分からなくなりそうになりながらも、ここで崩れるわけにはいかない。
自分は、自分でいなくてはならない。
ほんの一瞬のうちの判断がこのセッションの行方を左右する。
直感的にそう感じたようでした。
まず、小沼氏はベースラインを弾かないコンピングを軸に伴奏をしている。
それも、表拍に音を入れてなかったりする。
となると、頼りになるのは自分の足だ、何食わぬ顔で、自分は自分のリズムでテーマを取ればいいんだ。
そう、思った瞬間、一筋の光が差したように、音楽の軸が自分に戻ってきたような感覚がありました。
聞いているようで、聞かない感覚。
以前、プロのミュージシャンのお話を聞くと、ジャズでは相手の伴奏も聞きすぎない、あまりに相手の演奏に耳を取られすぎると、自分のタイムで進まない、と。
それは、一緒に遊んでいても、それぞれに自由時間がある、ある程度自由な中で共に行動するような感覚に似ていると思いました。
同じ音楽を共有する、でも引っ張られない。
そこで、少しリラックスして演奏ができるようになってきたのです。
思わず漏れ出た一言

テーマを演奏してからは、アドリブに入り、これが意外にも普段の自分では出ないようなフレーズが出てきたのです。
小沼氏の伴奏から、気づかないうちにインスパイアされているのでしょうか?
段々と一緒に音を出すこと自体を楽しむようになってきました。
これこそが、今日目標としていたことでした。
途中、小沼氏は伴奏でひとつのリズムモチーフを使います。
リズムモチーフとは、ある一つのリズムの細かいリズムパターンを作る、それを繰り返す。
というものでした。
そこで、私は感じ取りました。
「小沼さんは、誘っている?」
この瞬間に、小沼氏が私に語りかけてきている、もっと話をしようじゃないか。
とギターで話しているように聞こえたのです。
「多分、この瞬間を逃したらダメなんだろうな」
そう感じた私は、リズムのモチーフを真似て、自分の音使いでそれを発展させました。
そこで、私のソロ終了。
すると、驚くべきことに小沼氏から。
「イエー。」
という声が漏れたのです。
私は、それを聞き逃しませんでした。
イエーと自然と声が出ると言うことは、ジャズミュージシャンが楽しんでいるサインだからなのです。
ソロ交代

今度は私が伴奏に回る番です。
特にこれといって難しいことはしようと考えずに、基本のパターンを堅実に演奏しました。
そこでも小沼氏の凄さが随所に垣間見えます。
まず、うねるようなライン、自然に半音や経過音を使いとても独特な流れを作ります。
そして、間の取り方。
フレーズで、小さな波や大きな波が終わって、さあ次に音を出そうとする、そのタイミングや休符の取り方が絶妙なのです。
ソロ全体が、大自然のような、海のような、自然で大きなものに感じました。
そして、テーマにしっかり戻り、エンディング。
最後のコードは少し浮遊感のあるコードを弾きました。
すると小沼氏が、その上でさらに幻想的なコードを弾きました。
私が夜の海のような空気感だとしたら、小沼氏はそこに幽玄に浮かぶ月のようでした。
しばらくそのコードで会話を楽しみました。
私は、楽しかった旅行が終わり家に帰宅する時のような感覚を覚えました。
一瞬の出来事だったようにも思えるし、永遠に続く宴のようにも感じたセッションでした。
ビルフリゼールを聞け

セッションが終わり、小沼氏が一言。
「うん、リズムも良いし何より自分のスタイルを持ってこう弾きたいと言うのがちゃんとあるね。」
と言っていただけました。
もう無我夢中だったので、まだ余韻に浸ってましたが。
それを聞いて嬉しく思いました。
誰かっぽいと言う感じではなく、ちゃんと自分のスタイルがあると言うことは自分にとって最高の褒め言葉でした。
しかし、その後何かアドバイスをいただけると思っていましたが。
小沼氏は、しばらく何も話さないままでした。
ならば、こちらから質問をしようと思い。
「ソロを弾く時、どうしてもビバップの感じが抜けなくて、もっと現代的にしたいのですが」
と、伝えました。
すると小沼氏は。
「ビルフリゼールを聴くと良いよ」
と一言。
私は。
「ビルフリゼール?」
と思いました。
小沼氏は、grant green、George benson、Herve sambなどのグルーヴ系のギタリストに影響を受けていると公言していたので、アンビエントや空間的なスタイルのビルフリゼールの名前が挙げられたのは少し意外でした。
そして、酒バラの演奏動画がyoutubeに上がっているので、そこからヒントがたくさんあることを教わりました。
「例えばこう」
と、7thコード内での斬新なヴォイシングやアプローチを実際に演奏してくださったり、方法論を教わりました。
今思い返すと、何故ビルフリゼールだったのか?考察すると。
①同じテレキャスター使い。
②アルゼンチンやフォーキーなものを幅広く聞いている私のスタイルに合っていると感じた。
③音数が少ないが無駄のない音使いで構築する。
この辺りのことを、セッションで感じ取り勧めてくださったのではないか?
とも感じました。
※実際に、そのアドバイスはとても参考になり、レッスン後にビルフリゼールを改めて聞き直すと多大なヒントが隠されていたのです。
その後は、1発もののファンクでリズムのことについてアドバイスをもらったりと有意義な時間が過ぎていきました。
エンディングセッション
そして、一通りレッスンが終わると最後にもう一度酒バラをソロのみセッションしました。
びっくりするくらい肩の力が抜け、さっきまで出てこなかったようなアプローチや、何よりもっと冒険しよう、挑戦しようという姿勢でセッションに臨めました。
そして、最後のアドバイスは。
「もっとオープンになっていい、もっともっと楽しめるはず、そうしたら新たな場所に行けるよ。」
とシンプルながらも深みのあるメッセージでした。
その、オープンというのはきっと今日のセッションのような感覚なんだなと思いました。
まだまだ自分の中に眠っている感覚を呼び起こしたり、こういうアプローチはイマイチなんじゃないかな?と考えているものも表に出してみる、感じたままに音を出す。
小沼氏のオープンという言葉はとても価値のある言葉だと受け取りました。
レッスンを終えて

あっという間の45分。
家路に着く頃には、とても満たされた気持ちになっていました。
そして、時間が経つにつれてマンツーマンレッスンの凄さを実感したのです。
まず、小沼氏の。
「エレキ弾いてる?」
の意味が、今になって分かってきたのです。
当時私は、フォーキーなサウンドやクラシックギターで南米音楽や準クラシックに傾倒し、エレキギターと少し距離を置いていた、全く弾かない時期があった。
しかし、この1本というエレキギターに出会い、よくエレキを弾くようになった。
グルーヴのある曲を奏でる心地良さをもう一度再発見したのです。
そこで、思い出しました。
小沼氏は、自分のファンキーなプレイヤソウルフルなプレイを聴き、いいねと言ってくれたことを。
「あなたの持ち味だよ、忘れないで欲しい」
という、メッセージが。
「エレキ弾いてる?」
の一言に込められている気がしました。
かといって、新たに模索した道を捨てるわけでもない。
完全に、自分のオリジナルな感覚で表現できるはずだと。
そして、セッションの後気付いたらジャズに対する昔のトラウマやコンプレックスが完全に抜け落ちていることに気づいたのです。
ずっと、何歩も先の道を切り拓いてきたリスペクトするギタリストである小沼氏から、イエーという声が聞けた、自分のスタイルがあると言われたことは。
「あなたもジャズを自由に奏でていいんだ、あなたのままでいていいんだ」
と許可を得て、肯定されているような感覚でした。
その瞬間、深い霧が晴れて目の前のもやのようなものがスッとなくなリました。
「自分は自分の道を切り拓いていくんだ」
そんな力強い決意と共に歩んでいける。
そんな確かな手応えがありました。
そしてその時、あのセッションの一瞬で音を交わした時に小沼氏がたくさんのことを読み取りメッセージをくださったことや、エレキギターを弾いているか?と気にかけてくださったことに対して感謝の気持ちと改めてトップアーティストとしての凄さを感じ尊敬の念を抱きました。
と、同時に私も生徒さんをそんな風にそっと優しく照らしてあげられるような先生になりたいと強く思うようになったのです。
たった1回のレッスンがギター人生を変える。
そんな事が本当に起こるのだと体感した貴重なマンツーマンレッスンでした。

